FUTURE "S" INTERVIEW with 柳澤 春馬 / SPACE DIRECTOR
2022.02.09
ショップスタッフ、バイヤー、PR・・・
ファッションに携わる様々職種を経験し、現場での出会いや発見から新たな道を切り拓いた今気になる人物を訪ねる新企画。
アダム エ ロペが取り組む「サステナブルなものづくり」とともに、彼らが思う未来のカタチについてインタビューを行いました。
「縛られないことが生み出す〝個性〟」
柳澤さんはSPACE DIRECTOR、という肩書きでお仕事されているんですよね?あまり聞き馴染みがないのですが、実際にどういったお仕事なんでしょうか?
- 横文字で書くとすごく仰々しいんですが、ようは「空間に携わること」を生業として、あまりカテゴライズせず、 制限を持たせないようにしているんです。
店舗の内装デザインや、百貨店のPOP UP SHOP のスペースだったり、家具を一から作ったり。
きっちりこう、という職種ではない分、自分のイメージやこだわりも残したい。
ふんわりとですが、そんな感じです笑
元々、アパレルの販売もされていたんですよね?
- はい。いわゆるセレクトショップ、という形態とは少し違うんですけど、働いていました。
そこでバイイングに携わらせてもらったり、さまざまな人との出会いがありました。
今日選んでいただいた「BATONER(バトナー)」もご存知でしたね。
- ジャパンブランドや、ファクトリーもチェックしますよ。
着心地だったり、仕事柄自宅で作業することが多いのでリラックスできるかどうかも洋服を選ぶ上で重要な要素です。
これ、リサイクルナイロンで作っているんですね、すごく着やすいです。
柳澤さんの年齢を考えると、社会人4年目~ 6年目くらいですよね?
ちょうど一回目のターニングポイントになる方が多いイメージですが、会社に所属などは考えたりしなかったんですか?
- 22歳で文化(文化服装学院)を卒業して、すぐにニューヨークに行きました。
当時も服屋でアルバイトしていたんですけど、そこで就職、という感じでもなくて。
色々受けたりもしたんですけど、結果的に留学するならこのタイミングしかないかな、と。
そこでもさまざまな出会いがあって、エキシビジョンもできた。
ただ、一番最初に空間作りというものに興味を持ったのはそのアルバイト先のオーナーに出会ったのがきっかけですね。 販売員で入ったと思ったら、半ばアシスタントに近い形で、店舗の内装などをチェックしたり、資材を見たり・・・今考えると不思議ですね笑
先見の明、ですね笑
実際に日本に戻り、何か考え方は変わりましたか?
- そうですね。もちろん、ニューヨークでの経験もとてもためになったんですが、帰国してからあらためて さまざまな店舗を見るようになって。
すごい素敵な店が日本にもたくさんあるな、と。
その中でJackPot(柳澤氏が当時働いていたセレクトショップ)にも出会えて、ここで働きたいと思えたんです。
jackpotは老舗ですし、ファッション好きなら誰しも知っている名ショップだと思います。実際に取り扱っているジャンルで好きなものが多かったのですか?
- もちろんJackPotでも買っていましたし、昔からバイト代は全部服につぎ込む、みたいな生活をしていたので、洋服は今でも結構買いますね。
ただ、選ぶ基準があって。
「清潔感」は絶対外せない条件なんです。
古着はほとんど着ないし、ローゲージよりもハイゲージが好き。
シャツやスラックスなどどこか洗練されているものや、凛とするものが響くことが多かったです。
それから、自分の身体に合わないものは選びたくないですね。
働いているときや今でも、ジャンルというよりもそこに重きを置いていて、今までもこれからもブレないと思います。
たしかに、先日お会いした時もすっきりとしたドライバーズニットにPコートでしたね。清潔感がありました。
- ありがとうございます笑
トレンドも凄く大事なんですけど・・・
快適な服を着ることはいいと思うんです。けれど何事もやりすぎは良くない。 品性を伝える、ということは昔からとても大切にしていて、どうスタイルでそれを伝えるかって、すごく難しいと思うんです。 海外にバイイングも行かせてもらっていたのですが、そこで日本人の方が割と同じかっこをしていた印象があって。 だからこそ、トレンドを理解しつつも、自分らしさを残したい。
なるほど。少し柳澤さんの空間づくりに似ている気がしますね。
- そうかもしれませんね。
SDGsだったり、今トレンドのように「持続」にまつわる様々な言葉があふれていますけど、 実際のところ、一番のサステナブルって作らないことだと思っていて。自分の仕事柄もそれは理解しながら動いていかなければ、と思っています。
建築においては、POP UP後の廃棄物だったり、素材の面から考えることももちろん多いです。
だからこそ、自分で作りたいし、提案したい。 リユースだってWIN-WINですしね。
正解は一つじゃないし、業種によっても異なると思います。
最初にSPACE DIRECTORという肩書のお話ししていただきましたが、やはりファッションが強く影響しているんですね?
- そうですね、ファッションが生み出してきた力や変革って、僕らが思っているよりもすごく強くてポジティブ。そしてファッションと建築って、切っても切り離せない関係だと思う。
自分自身に置き換えたときにも、ファッションに携わっていたからこそ、自分の行動やマインドが反映できたり、表現の幅を持てた気がします。
洋服でも様々な美しさがありますけど、機能美と造形美って、似ているようで結構違うじゃないですか。
僕は造形美に惹かれてしまうし、建築も同じ。
元々の場所のポテンシャルをどこまで引き出せるのか?ということを考えています。
音楽もしっかり選んで聞くし、同じものをずっとループしてしまう。けれどそれもこだわりの一つです。
自分のリズムで仕事をすることが、きっと心地よさを提供できるし、 結果的に自分自身のことも成長させてくれると思っています。
haruma yanagisawa
photographer
sio yoshida
hair/make
chihiro yamada