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VOICE of ROPÉ‐毛織物の一大産地「尾州」‐

2023.02.08

  • VOICE of ROPÉ
  • 尾州
  • ツイード
  • MADE IN JAPAN
  • ROPÉ

毛織物の中でも、特に高品質な製品作りで知られる尾州とは、愛知県一宮市~岐阜県の一部のこと。
この地で生産される製品は「尾州ウール」と呼ばれ、巧みな技術で知られています。
国内で商品を製造することで二酸化炭素を減らす取り組みや、日本の物づくりや伝統的な技術を継承していきたい。
そんな思いとともに、今シーズンのROPÉが選んだのが、尾州産地のツイードです。
生産にご協力いただいた「岩田健毛織」さんに、尾州毛織物の歴史や産業の背景などを伺いました。

尾州ツイード発展の歴史

「尾州はもともと綿の機屋(はたや)※が多かったのですが、明治の大きな地震でほとんど崩壊してしまいました。 時代的には第一次世界大戦のころで、毛織物の軍服が必要なとき。 当時日本はドイツから輸入して軍服を作っていましたがドイツとは敵対の時代。 そんなときに、日本で毛織物を作らないと軍服も作れないという話から、愛知県・津島の「片岡毛織」さんの片岡春吉さんが、この産地で毛織物を作らせてください、と手を挙げられて、この地に毛織物の産地の始まりがあったと聞いております。 そこから背広や軍服を中心に津島市、一宮市、羽島市にも技術の継承があり、毛織物の産地になったということで、一番盛んだったのは昭和40年代です。」

※機屋(はたや):糸を織物に加工する業者。

尾州が毛織物の産地として栄えた理由

「尾州産地の近くを流れる木曽川は、日本一軟水らしく、軟水は織り上がったウールの油を洗うのに、非常に泡立ちやすくてキレイに落とせます。産業発展の背景は軍服のために手を挙げた、ということですが、たまたま水も豊富だった。後づけではありますが、湿気が多く、織物がいい風合いに仕上がるという利点もあります。山から海までの近いところに、水の良さがある。尾州が残ってきたのは、製織(せいしょく)の発色や生地がキレイに染め上がり、品質も良いというところがあると思います。またこの地区は、染色屋さん、撚糸(ねんし)※屋さん、織り工場さんなど、各カテゴリーのプロの職人さんが尾州地区の中ですべて一貫して生産できるという、多様な物づくりができた背景があったことが特徴かと思います。」

※撚糸(ねんし):糸をねじり合わせて撚り(より)をかけること。

ROPÉが別注したツイードの特徴

「グリーンのツイードは、4つの糸を使っています。コットン、光沢のあるレーヨン、グリーンの凹凸のあるコットン、それに別注で作ってもらった光沢感のある''つぶノットリリアン''という編み地です。見本の生地にできる限り近く、また尾州らしさがでるような糸の選定にしました。そこにデザイナーさんの、グリーンの凹凸をもう少し立てたいなどのリクエストをふまえ、番手を太くしたりした、重量感と立体感のある素材です。ピンクのツイードのほうは、細番手のコットンとモール糸のナイロンで格子柄を作ったツイードで、糸の微妙な太さの違いによる凹凸があり、細くても表情があります。その上に、かわいさを感じる‛‛つぶノットリリアン''を使用しました。さらにチェック状のところに羽根モールという糸を使っているので、ベース地が見えつつ、目が詰まったチェックの質感が特徴のバランスの良い商品です。」

持続可能(SDGs)な社会のために

「我々にとって重要な、加工に携わっていただく各所のみなさま方とのパートナーシップをより強化して、技術の継続を図りながら今の持続可能な社会の流れに対応していきたいと思っています。(産業や技術などは)一度なくなってしまうとそれを復活させるのは難しく、いかに継続していくかを我々は一番大切にしています。また、ウール素材でも、紡績段階で使いきれてない部分の原料を再利用して紡績していくなどの動きを進めたり、一部、ポリエステルや綿などのリサイクルも少しづつ始めています。環境に優しく、ムダなものを出さずに使っていく、ということもこれからは大事かなと思っています。」

※写真は取材当日の社内黒板

岩田健毛織株式会社:1940年創業。当時は麻の布を洗う整理加工業を営んでおり、1948年に毛織物の機屋となり現在に至る。現在の社長は3代目で、83年の長きにわたって尾州で毛織物業の発展に貢献。さまざまなファンシーツイードを始め、天然ミックスの複合素材、サステナブル素材など、取り扱い素材は多岐にわたる。