【small talk】Who owns the pearls?
2022.10.07
small talkは、「M(ムウ)」が発信するちょっとしたお話。例えばブランドの物語や物づくりの背景や関わる人々、私たちの身近なことから広く視野を広げていけるようにーー。
「月のしずく」や「人魚の涙」というロマンティックな異名を持ち、フォーマルなシーンにも相応しく、親から子へと受け継がれるギフトとしても親しまれているパール。最近はジェンダーの垣根も飛び越えて、より多くの人々を魅了しています。今回はそんなパールの歴史を紐解き、新しい付き合い方について考えていきます。
70年という英国史上最長の在位期間を誇ったエリザベス女王が亡くなった。
英国の象徴として多くの人から愛された女王は、その上品でカラフルなファッションも注目を集め、憧れの的だった。なかでも人々に姿を見せる際に必ずと言っても良いほど身に付けていた三連のパールネックレスは、父親であるジョージ3世から贈られたものだそう。またパールが葬儀の際にも身に付けられるようになったのは、エリザベス女王がウィンストン・チャーチルの葬儀でネックレスを身に付けたのがきっかけとも言われている。
古くから日本では「白玉」と呼ばれ、万葉集でも大切な人や愛しい人に例えられてきた。中国では紀元前2300年頃、ペルシャで紀元前7世紀頃、ローマでは紀元前3世紀頃から、人々が装飾品として身に着けていたと言われている。高貴な人々がこぞって身に付け、日本では輸出品として重宝され世界の貿易にも様々な影響を与えた。養殖技術が発展していく一方、1929年にウォールストリートの株価暴落をきっかけに市場が崩壊する。1930年に迎えた危機を救ったのは、ココ・シャネルだった。
パールをこよなく愛したココ・シャネルは、イミテーションジュエリーも好んで用い、彼女が提案したリトル・ブラック・ドレスと合わせたスタイルは今でも愛される永遠のクラシックとなった。そうしてオードリー・ヘップバーン、グレース・ケリーやマリリン・モンローと、これまで数多の女性のアイコンたちを一際輝かせてきたアイテムは、2020年代を迎えより多くの人が手に取るものへと変化している。
マーク・ジェイコブスやアレッサンドロ・ミケーレといったメンズファッションの牽引者や、ハリー・スタイルズやエイサップ・ロッキー、ポストマローンやファレル・ウィリアムなどのスターがパールをコーディネートに取り入れた。ファッションにジェンダーの垣根は不要だということを象徴するアイテムとも言えるだろう。
これまでエレガントな女性の華やかさを象徴してきたアイテムだからこそ、今はもっと自由に身に付けたい気分だ。Tシャツやデニムと合わせても良い、どんなシーンでも良い、誰が身に付けても良い。あらゆる垣根を超えていく、その宣言としてコーディネートに取り入れてみたい。
photo / Miu Kurashima
text & snap / FIUME Inc.