【small talk】Just the way you like it.
2022.07.29
「かっこいい靴をそのまま履きたくて」
small talkは、「M(ムウ)」が発信するちょっとしたお話。例えばブランドの物語や物づくりの背景や関わる人々、私たちの身近なことから広く視野を広げていけるようにーー。
いつも洒落ている男友達が履いていた靴がかっこよかった。撥水性のあるスエードを使ったサイドゴアブーツの、ボリュームある無骨なフォルムがパンツのレングスから覗いている。気を使わずにどこまでも歩いていけそうなその靴は、ウィメンズのシューズではなかなかお目にかかれないムードを纏っていて、男友達がちょっと羨ましくなった。
靴のブランドは「Tomo&Co」。デザイナーの小野崎朋孝さんが”A pair of Bricolage ”をテーマにレザーシューズやスニーカー、レザーグッズを作っている。小野崎さんが考える”良い靴”とはベーシックで履きやすくて、ユーモアが感じられるもの。「世の中にはたくさん素晴らしい靴があるけれど、玄関で選ばれる一足を作りたい」と話す様子は真剣だけど、小野崎さん自身がよく笑う、チャーミングでユーモアのある人だった。23歳でアパレルのブランドをスタートし、自分が好きなストリートカルチャーをベースにあらゆる要素をミックスさせながら物づくりを続けてきたが、2014年にシューズや帽子だけのラインにシフトチェンジしたそうだ。
どうしてもあの靴が欲しくて、小野崎さんにかけあってメンズの木型をそのまま使った別注アイテムを作ってもらった。「レディースの木型を使うとエレガントに仕上がるよ」と小野崎さんが教えてくれたけれど、今の無骨なフォルムが好きだからその提案は断った。足首が遊んでしまうブーツの筒部分だけ、歩きやすいように少し絞ることに。どんなにデザインが好きでも、歩きにくい靴はだんだん手に取らなくなってしまうから。何度も細かく調整して、納得のいくバランスが出来上がった。
気に入った靴をどんな洋服にも合わせられるように、天然植物(草や木の汁など)から抽出したタンニン”ベジタブルタンニン”を使ったグレーも作ってもらった。グレーのようなブラウンのような絶妙なニュアンスカラーが出来上がり、「ブラックとブラウンが定番でそればっかりになっちゃうけど、こんな新鮮なカラーも良いね」と小野崎さんにも褒めてもらえた。
同じグレーでも作った「Tomo&Co」のコインローファーは、都会的な印象。共生地のトラベルバッグは、小野崎さんが持っていて素敵だったものだ。「蜘蛛のデザインで良いの?」と心配していたけれど、大丈夫。「女性だから、レディースのアイテムを」なんてあんまり考えないで、かっこいいと思うものや好きなものを、そのまま身につけたい。
Edited by FIUME Inc.