Inside ACT, Behind the Design.
日常にちょうどいいダウンができるまで。

気ままに出かける休日も、仕事へ向かう朝も。冬の暮らしに、つい手が伸びる一着がある。ふっくらとした見た目に、想像よりも軽い着心地。街に馴染むデザインと、手の届きやすい価格。アダム エ ロペのACTが考えるのは、そんな日常にちょうどいいダウンだ。

その一着を支えるのは、素材の背景にも目を向ける姿勢。アダム エ ロペを展開する株式会社JUNは、2030年までに全商品でトレーサビリティを徹底した持続可能な素材や製造方法の実現を目指す。一方、羽毛サプライヤーのALLIED Feather + Down(以下、ALLIED)は、扱う羽毛の100%を動物福祉基準であるRDSの認証農場から調達し、洗浄水の再利用など環境負荷の低減にも取り組む。品質とともに、その調達・生産背景にも責任を持つ。そんな姿勢への共鳴が、両社のものづくりを支えている。

その思いを、日常にちょうどいい一着へ。素材選びからデザイン、価格まで、どんな判断を重ねてきたのか。クリエイティブディレクターの坂田真彦氏と、ALLIEDの日本窓口として、製品づくりを支える玉木丈也氏に聞いた。

日常にちょうどいいダウンとは。

—まず、お二人の関わり方から伺います。玉木さんは、2016年秋冬の企画からアダム エ ロペの製品づくりに携わっているんですよね。

玉木:当初はダウンに限らず、OEMでさまざまなアイテムを提案するところから始まりました。その当時からALLIEDの代理店はやっていたので、最初から「ALLIEDの羽毛を使いませんか」とお話ししていたんです。

—羽毛を供給するALLIEDと企画するアダム エ ロペの間で、製品化を支える立場ですね。坂田さんが企画に加わったのは、いつ頃でしょうか。

坂田:約2年前ですね。昨年のACTの企画でもご一緒しています。

—以前から続く取り組みを、お客さまに分かりやすく伝えるため、ACTとして打ち出したと伺いました。

玉木:ALLIEDの下げ札を付けていても、それがどういうものなのか十分には伝わっていなかった。他社でもALLIEDの羽毛は使われているので、それだけでは違いを伝えにくいんです。ACTとしてシリーズで組むことになって、より分かりやすくなったのではないかなと。坂田さんが加わってからは、フード付きの型を中心に継続するだけでなく、より軽いものや薄いもの、新しい型が入って、ラインナップも広がりました。

坂田:あくまで定番的なものにしたかったので、新しいデザインをどんどん出していく、という感じではないんです。とはいえ、生活の変化はあるじゃないですか。そういうことは、常に考えています。

—街で着るダウンを考えるうえで、大切にしたのはどんなことでしょう。

坂田:そもそもダウンは、登山や極地での作業、研究などのために発展してきた服ですよね。それが生地の軽量化などによって、街でも着られるようになっていった。

僕の師匠が、1960年代の終わりから70年頃に初めてアメリカへ行ったときの話が面白くて。当時、日本に入ってくる情報では、ボタンダウンシャツにブレザーとか、冬ならランチコートやスタジャンとか、アイビーやトラッドが主流だった。でも、実際に行ってみたら、街の人たちがダウンを着ていたそうなんです。初めて見るものだから、それで「みんな布団を着ているみたいだった」と思ったんだそう。

—イメージしていたアメリカの服装とは違ったんですね。

坂田:そう。それだけ画期的な服だったんだと思います。でも、「布団を着ている」というのは、ダウンのよさでもありますよね。いい羽毛布団って、軽くて膨らみがあるじゃないですか。ダウンを考えるときも、それが念頭にあるんです。

アダム エ ロペは都市のお客さまが多く、電車で通勤する人もいます。極地へ行くようなスペックまでは求められないけれど、ダウンらしい、ふっくらしていて、柔らかくて軽い。そこに重点を置いて相談させてもらいました。

—具体的には、どのような人や生活を思い描いているのでしょう。

坂田:僕が加わったタイミングで、もう少し大人に向けた提案を、という話もありました。以前は仕事ならスーツにコートだったのが、ネクタイが外れて、いまはジャケットも外れてきている。シャツとパンツで仕事をする人が、真冬に上から着るものを考えると、やっぱりダウンは便利なんです。

ただ、ロゴが大きく入っていたら、仕事に着ていくのは難しいと感じる人もいる。オンとオフの用途を考えると、ロゴがない方がいい。一方で、子どものサッカーや野球の応援に行ったときに、周りと同じダウンばかりになるのも避けたい。そういう人に向けて、ちょうどいい価格でつくりたかったんです。

—価格も含めて、その人の生活に合っていることが大切なんですね。

坂田:若い頃はいろいろな服を買っていた人でも、生活が変われば、お金の使い方も変わってきますよね。そのなかで、「仕事にも使えるし、休みの日にも着られるし、このくらいの値段なら」と納得して選んでもらえる。

そういうことも含めて、ちょうどいいブランドにしたいなと。いろいろなものを知っている人が、そのうえで「これがいい」と思って選んでくれるものを目指した、という感じですね。

着心地を、素材と細部から。

—玉木さんは、坂田さんの考えにどう応えているのでしょう。

玉木:色や素材感の方向性は、当初からぶれていないと思います。価格が合わないからといって、まったく違う方向の素材を提案するわけにはいきません。機能的だけど、見え方はきれいで、化繊らしさが強すぎない。仕立て映えがして、性能も維持できるものを意識していました。

羽毛に限らず、いろいろなものが高騰していますが、「上がったので、上げます」だけでは、僕らの商売として成り立たない。生産地を考えたり、生地の品質のレベルは変えずに、どう手当てすればコストを抑えられるかを考えたり。そこは大事にしてきました。

—今回、700フィルパワーの羽毛を選んだ理由を教えてください。

玉木:フィルパワーの高い羽毛を使うなら、生地ももっと軽くするなど、羽毛との相性を考えなければいけません。

今回の表地はラミネート加工を施した、ある程度ハリとコシのある生地です。そのなかで、しっかりダウンの膨らみを出したかったので、コストや機能のバランスも含めて、700フィルパワーが適していると考えました。

—数値だけではなく、生地や構造も含めた判断なんですね。

玉木:例えば、アウトドア用途で完全防水にするなら、縫い目の裏にシームテープを貼ることもあります。でも、今回は街で着るためのものなので、省いています。

裏地ももっと薄い生地はあります。ただ、それだと羽毛が吹き出しやすくなる懸念がある。特にニットなどを着たときに気になるので、羽毛が出にくい高密度の素材を選んでいます。そのうえで、膨らみもしっかり表現したかったんです。

※フィルパワーは羽毛のかさ高性を示す指標。製品全体の暖かさは、羽毛の封入量や生地、構造などによっても変わります。

—今回の新型は、フードのないスタンドカラーが特徴ですね。

坂田:フードがない方がいい、という人も増えているんじゃないかと思って。フードが付くと、少しスポーティな印象が強くなりますから。

軽くするために、切り替えもできるだけ減らしています。ファスナーも必要最低限にするなど、パーツも見直しながら、より軽くするための調整を繰り返しました。

—襟についても、いろいろな人に着てもらいながら何度も修正したと伺いました。

坂田:襟は服の顔ですからね。開けたときの開き方と、閉めたときの高さ。あまりきつくてもいけないし、ゆるくても風が抜けて寒い。本格的なアウトドアのものは首元が詰まっていて、動かすと当たることもありますけど、今回はそういうところも見ています。

—フロントのファスナーも、生地を噛みにくい設計なんですよね?

坂田:生地を噛むダウンって、すごくストレスなんですよ。柔らかい生地だと、そこが切れてしまうこともある。

樹脂製のファスナーを使う方法もありますけど、それだと少しスポーティに見える。今回は細くて柔らかい金属のファスナーを使って、それでも生地を噛みにくいようにしています。裏側には風を防ぐための前立ても付けていて、ステッチで留めることで補強にもなっています。

玉木:一型あたり、少なくともシーズンに三回くらいはサンプルをつくります。付属やサイズ感、ダウンの分量も含めて、納得できるものにしてから最終仕様を決めています。

毎日着て、長く付き合う。

—着てみると、見た目から想像するより軽いですよね。

坂田:はい、そこはこだわりましたから。でも、ただ軽いだけでは選んでもらえないんです。ちゃんと存在感があって、見た目より軽い。それが重要で。見た目は、しっかりしていてほしいんですよね。

—フード付きや、AVIREXとタッグを組んだレザーダウンもあります。モデルごとの違いは、どう考えていますか。

坂田:用途ですね。外でスポーツを観戦するなら、ちょっとした雨のときにフードがあった方がいい。車に乗るなら、さっと着脱できるものがいい。それぞれの特性に合わせています。レザーダウンも、着てみると軽いんですよ。

—AVIREX、アダム エ ロペ、ALLIEDの三つの名前が入ったタグも印象等です。

坂田:ブランドのネームは、看板みたいなものじゃないですか。ほかの名前を一緒に入れるのは、簡単ではないんです。そこに名前を入れてくれることには、リスペクトがあると思いますね。

—シリーズを通じて、どんな一着を届けたいと考えていますか。

坂田:いろいろな人が、それぞれの用途に合わせて着られて、一枚でスタイリングが完成する。そういうことは意識しています。ファッションにすごく興味がある人だけでなくても、そういう服が欲しい人はいると思うんです。

—長く着るために、お手入れで気をつけたいことはありますか。ダウンを洗うのは、少しためらってしまいますが。

玉木:作り手としては、むしろ洗ってほしいんです。羽毛は天然のものなので、汚れを残したままにすると、菌が繁殖してにおいの原因にもなります。日本ではシーズンに一度、場合によっては数年に一度しか洗わない方もいますけど、本当はもっと洗ってもらいたいですね。

—家庭の洗濯機で洗うこともできるんですね。

玉木:中性洗剤を使って洗えます。生地や付属パーツなどを傷つけないように、洗うときはネットに入れる。ただ、大切なのは、そのあとの乾燥なんです。濡れたまま放置せず、低温のタンブル乾燥で、羽毛までしっかり乾かしてほしいですね。

坂田:浴室乾燥のように干すより、乾燥機で回した方がいいということですか?

玉木:そうです。濡れた羽毛は固まりやすいので、そのまま自然乾燥させると、固まった状態で残ってしまうことがあります。乾燥機で回しながら乾かすことで、羽毛をほぐして、膨らみを戻していくんです。

—洗うことだけでなく、乾かし方も重要なんですね。

玉木:はい。水分を残してしまうと、においだけでなく、羽毛がダマになったり、ぺたっとしたりする原因にもなる。生地との相性もあるので、ケアできる素材との組み合わせを考えることも大切です。

—シーズンオフの保管では、どうでしょう。

玉木:小さく圧縮したまま保管しないでほしいです。広げてハンガーに掛け、風通しのいいところに置く。湿気が大敵なので。場所は取ってしまうんですけど、長年使うためには、そういうところも気をつけてもらいたいですね。

※家庭洗濯・タンブル乾燥の可否と方法は、必ず各商品の洗濯表示をご確認ください。上記の洗濯・乾燥方法は、レザーダウンには当てはまりません。

Text
Naoya Tsuneshige

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